慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科

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教授紹介

奥出 直人 教授

奥出 直人 教授
慶應義塾大学大学院
メディアデザイン研究科

サービスデザイン特論

イノベーションを生み出し、カタチにする「デザイン思考」

通信からマテリアルまで、私はこれまで多種多様な業種の企業と共同研究を行ってきました。扱う領域も、都市、ヘルスケア、農業など一見脈絡がないかもしれません。そのため関心の幅が非常に広いと思われがちなのですが、対象が変わってきただけで実は取り組んできたことは一貫しています。すなわち「人間が、意味、価値のあることを経験するための仕組みづくり」の実践研究です。
この仕組みづくりのためのアプローチの方法が20年以上前にアメリカで生まれた「デザイン思考」です。言葉こそ一般的になったデザイン思考ですが、私が取り組んでいるデザイン思考は世の中で言われるそれとは異なります。①人の行動を観察して、②共感し、③アイデアを生み出して、④プロトタイプにする。この4つのフェーズにトータルで関わります。私自身、初めてこの概念に触れたとき、「イノベーションを生み出してカタチにするプロセスそのものがデザイン」という認識に衝撃を受けました。
ここで特に大切なのが「共感」です。観察で得たデータを単に分析するのではなく、コミュニティに参加して対象を深く理解する。これが「共感」です。アイデアは機械や車、ソフトウェアといったカタチに結実しますが、共感がなければ始まりません。たとえば、農業における作業効率を考える際にも、問題意識から入るのではなく、中腰の姿勢で作業する辛さと一緒に、収穫の楽しさや値付けの喜びに共感する。それによって、農機の開発とは別のアイデアが生まれます。いま、多くの企業が生き残りを図るために切実にイノベーションの創出に取り組んでいます。真に求められる新たなサービスを生むために、デザイン思考への注目はますます高まると考えています。

「デザイン思考」でサービスを設計・実行するためのコースを新設

本研究科(KMD)では、今年度から新たに「サービスデザインコース」を開設します。指定する科目(一部は慶應義塾大学商学部に設置)を履修して所定の単位を取得すると修了サーティフィケート(証明書)を授与するというもので、履修のガイドラインと考えてもらえばよいでしょう。
サービスデザインコースでは、人々が「こういう人生がいいな」と思えるウェルビーイング(Well-being)に資するサービスを設計する力と実行力を養います。具体的には、ウェルビーイングの哲学に始まり、デザイン思考とそれを実現するために必要なエンジニアリング、マーケティング、管理会計など、トータルの能力です。
これらの能力を習得する授業の柱は、協力企業と共に実践する演習科目です。本コースの開設には、カリキュラムや協力企業の準備などに3年を費やしました。その過程では、過疎の村のために自動走行するシニアカーを製作するという試みを行いました。利用者の方から聞かれた「これがあれば昔釣りをした場所へ行ける」といった声は、従来の自動走行がもたらす価値観のイメージとは異なるでしょう。しかし、デザイン思考を用いれば、地域の特性に合致した新たな価値観を提供することができるのです。これが新設するサービスデザインコースの目的です。ぜひ多くの方にチャレンジしてもらいたいですね。

人に価値を与えることで自分の人生を切り開く能力を

KMDのカリキュラムは、フィールドワーク、グループワークなど、調査からプロトタイプの製作に至る実践が中心です。さまざまな経験を積んできた社会人のみなさんこそ、その蓄積を生かすことができる場だと思います。実際にKMDには社会人学生が多数在籍しています。会社で力不足を感じた人、30代半ばで入学して博士課程まで進む人、55歳ぐらいで役職定年になり、学び直しを決意した人など、学ぶ目的はそれぞれです。
入学から半年は、KMDの基礎を身につける期間として座学にも集中して取り組んでもらいます。多忙を極めますが、この期間だけ何とか時間を融通できれば、会社勤めとの両立は可能だと思います。その後はプロジェクト中心の学生生活となるためか、目的を共有する学生同士の結束は固く、お互いに教え合ったりサポートしたりしていますね。
KMDでの学びで大事なのは、人に価値を与えるものをつくろうとする意欲です。いま、世の中には従来の社会のあり方をつくり直そうとする流れがあります。その中で社会をポジティブにすることをビジネスにしようという意欲があれば、KMDでの2年間で大きく成長できるでしょう。自己満足に陥らず、「自分の人生を自分で切り開く能力を身につけたい」と考えるなら、KMDはそれを実現するのに最適な場所だと思います。

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