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私のリーダー論

森トラストの伊達美和子社長(下)

人は理屈だけでは動かない 子育てで学んだ人材育成術

2019/08/06  (3/3ページ)

 「祖父(森グループ創業者の故森泰吉郎氏)や父と、私の関係もまさにそうで、こちらから『こんなことを考えている』と話すと、いろいろ質問され、そこから対話が始まります。一方的に押し付けるのではなく、それぞれが自立してものを考え、情報共有をしながら、お互いにベストなチョイスを見つける――。そういうコミュニケーションを大事にしています」

■フラットでありつつ、リーダーとしての強さも

 ――リーダーシップを発揮するうえで、心がけていることはありますか。

 「日常的には社員とできるたけフラットな関係でいたいと思っています。共感したり、支援したりするタイプのリーダーシップです。しかし、最終的にリーダーは大きな決断をしなければなりませんし、結果の全責任も負わなくてはならない。フラットでありつつ、その後ろではリーダーとしての強さも併せ持つようにしているつもりです」

 ――後継者の条件は何だと考えますか。

 「不動産事業では2000億円、3000億円と投資規模が巨額です。プロジェクトは5年、10年とスパンも長いので、常に次を見据えて先手を打っていかなくてはなりません。そのためには、強い意志と信念を持ち続けられることが必須の条件だと思います。また大きな決断をするためには精神的な強さだけではなく、決断できる材料も持たなくてはなりません。事業に直接関係ない事柄にもアンテナを張り、何が将来につながるのかを常にリサーチし、頭の引き出しに入れておく必要があるので、やはり強い好奇心は必要でしょう」

子育てから「理屈だけで人は動かない」ことを学んだ

 ――母親でもありますが、子育てと人材育成に共通点はありますか。

 「子供って、特に一桁台の年齢までは論理的ではないですよね。その間は理屈だけではなく感情面でも本人が納得できるように寄り添い、導く必要があります。でも実はこれは子供だけではありません。大人は一見、論理的ですが、実際は論理だけでは動かないし、やはり気持ちの持ち方でパフォーマンスは大きく変わってきます。そのことを一番学べたのが子育てでしたね」

 「もう一つ、人間が形成されていくプロセスをゼロから見られた経験は大きかったです。前提の知識がない中で対話をし、一つ一つ手探りでやっていく。そのプロセスを経験したからこそ、社内の人材育成に関しても、3つの力を段階的につけていくという手法を考えたのだと思います。子育てをしていなかったら、やり方は全然違ったでしょう。男性も積極的に子育てに参加するとよいですよ」

伊達美和子

 1994年聖心女子大学文学部卒業。96年慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。同年長銀総合研究所に入社。98年森ビル開発(現森トラスト)に転じ、2000年取締役に。03年常務、08年専務。11年森観光トラスト(現森トラスト・ホテルズ&リゾーツ)社長。16年父の森章氏(現会長)からバトンを受け継ぎ現職。

(ライター 石臥薫子)

[NIKKEI STYLE 2019年4月18日付]

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