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私のリーダー論

経営共創基盤の冨山和彦CEO(下)

若きエリートこそ地方めざせ 再生請負人の人づくり

2019/01/15  (3/3ページ)

 ――みちのりHDの経営方式は非常にユニークです。地方の破綻寸前、または破綻した企業を次々に傘下に入れているのはなぜでしょうか。

みちのりHDは経営不振のバス会社を次々に買収して再建(福島交通のバス)

 「当社の仕事は、知恵出し、(経営者を送り出す)人出し、カネ出しの大きく3つです。そして、支援する企業のなかで最も深刻な状況の場合は、この3つをすべてやる。その典型例が地方のバス会社だったんですよ。要は『会社の総合病院』。みちのりHDの場合、最高経営責任者(CEO)の松本順は、産業再生機構で一緒に九州産業交通などの再建を手掛けました。松本という『名医』を頼って、さまざまな患者さんが運び込まれてくるのです」

 ――「患者」の共通疾患はなんですか。

 「圧倒的に経営者です。経営者が劣化したか、経営者のそれまでのスタイルや能力と環境が合わなくなったかのどちらかですね。会社は結局、頭から腐っていくんです」

■これからは地方にこそ可能性

 ――かねて、地方にこそ可能性があることを説いていますね。

 「さまざまな企業の再建に携わってみて、肌で感じたことです。日本は戦後、加工貿易というスタイルを取って利益を出し、国内市場をおろそかにしてきました。大企業は海外の安い労働力を使って利益を出したかもしれないけれど、我々日本で働く人の大半は恩恵を受けていない。この経済構造を変えていく必要があるんです」

 「私はよくサッカーを例にして話すのですが、欧州や南米といった強豪国には、どこでも地域に根付いたサッカーリーグがあります。その大きな土台の上に、ナショナルチームがある。だから選手層が厚く、強いわけですが、ビジネスでも優位性があります。通常、強豪国を追いかける側はナショナルチームを立ち上げて、サッカービジネスを成長させようとします。効率性は悪くありませんが、ワールドカップは4年に1度しかないので、これだけでは大きなビジネスにはつながりません。そこで、英国やスペインのように、大きなクラブを作る必要があります。これは、テレビ放映やネット配信で大きな収入が入ってきます。欧州のサッカークラブはこの地域、国、グローバルチームの3つがそろって大きなビジネスになりました」

 「ほかのビジネスも同じなんです。ローカルが基盤にあります。若いエリートはどうしても、世界市場、つまり『オリンピック』や『ワールドカップ』での競争に目がいってしまいます。しかし、そこに参加して競争できる企業は限られる。そもそも、非常に厳しい戦いです。グローバルな企業で世界チャンピオンを目指すのか、地方の企業でよりいい経営をし、生産性を上げ、賃金を上げるか。伸びしろでいけば、地方にこそ可能性があるんです。若い世代にもチャンスはあるし、やりがいもあると思いますね」

冨山和彦

 1985年東京大学法学部卒、92年米スタンフォード大学経営学修士。ボストン・コンサルティング・グループなどを経て2003年に産業再生機構の代表取締役専務兼COO(最高執行経営者)に就任、カネボウなどの再生案件に関わる。07年経営共創基盤を設立。

(松本千恵)

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