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テーマ:人間科学研究科
「援助者」として心に寄りそう臨床心理士を育成


東洋英和女学院大学大学院
人間科学研究科

学内外の豊富な実習で実力を磨く

将来の不確実性を感じる現代社会では、心の問題を抱える人々が増加しており、その悩みも多種多様だ。東洋英和女学院大学大学院人間科学研究科臨床心理学領域では、心に何らかの痛み、苦しみを抱えた人々の声に耳を傾け、それを解決に導くための「援助者」となる優秀な臨床心理士の育成に努めている。

大きな特徴は、医学部の医師養成教育をモデルとした実習中心のカリキュラム。入学時の春から在学中を通じ外部の病院、教育相談所などを毎週訪れ、現場で働くベテランの医師や臨床心理士に指導を受けながら、患者や子ども達に接して経験を積んでいく。

学内にも「東洋英和こころの相談室」という一般の人が訪れる心理相談室があり、学生は1年次の後半から実際にケースを担当する。もちろん、専門相談員や教員がしっかりバックアップする。学んだ理論を活用・実践できる場が学内に設けられているのは、非常に恵まれた環境と言えるだろう。

個々人の適性に合わせた指導プログラム

これら学内外での経験をフィードバックし、さらに深い洞察力や見識を身につけるための授業が、週1回行われている「ケースカンファレンス」である。全教員・学生がケースを持ち寄り発表や討議を重ねることで、数多くあるケースに触れ、対応するための知識・経験の吸収につなげていく。

本大学院には学部からの進級者、現場で働く社会人など、多様な背景を持つ学生が集まっている。当然、それぞれの個性やスキルも異なるため、学習・実習プログラムは、一人ひとりの適性、将来性を見極めながら弱点を補強し、個性を育てるようにカスタマイズして提供していく。

研究は原則として「主指導」というゼミの担当教員のもとですすめることになるが、同時に「副指導」の教員からもアドバイスを受けられる制度が整っている。一方、臨床実践は実際にはすべての教員から多面的な指導を受けることになる。さらに外部の「スーパービジョン」が義務づけられており、小さな失敗なども含め、一対一でじっくり相談していく。

臨床心理士を目指しながら、その過程で生じる心の悩みを誰かに相談する──これは自分がクライエント(来談者)の疑似体験をすることであり、心にある葛藤をリアルに把握する感性が磨かれる。この貴重な体験が、痛みに寄りそい、解決を支えるこころの専門家としての土台になっていくのである。

「床に臨むこと」と人間的な成長

臨床心理士は医師ではないため、薬を投与して症状をやわらげるといった治療はできない。しかし、心の苦しみはじつに多様で、薬だけでは真の解決に至らないケースも数多くある。精神科などに通院することをためらう人も少なくない。

そういう人々の身近なサポーターとして、共に問題をみつめ、新たな可能性を一緒に育てる、そしてクライエントが自らの治癒力で問題の解決と人間的な成長を遂げていくための「援助者」として伴走することが臨床心理士の役割だ。

臨床とはまさしく「床に臨む」、すなわち心身を横たえる人に寄り添う関係から始まる。人々を援助しながら、自身もさらに成長しようとする志を持った人の入学を心待ちにしている。

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