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リーダーのマネジメント論

ネスレ日本 社長兼CEO 高岡浩三氏(下)

「一匹オオカミにもチャンス」 ネスレの人材活用術

2017/07/14  (1/2ページ)

食品世界最大手ネスレ(スイス)。そのなかでも「ジャパンミラクル」と呼ばれるほどの高収益を実現したネスレ日本の高岡浩三社長兼最高経営責任者(CEO)。多国籍企業の日本法人で、マーケティングのプロとして頭角を現し、トップに上り詰めた。自らに続く次世代のリーダーをどのように育成していくのか。高岡氏に聞いた。

◇   ◇   ◇

■ローカル社員が初の本社役員級に

 ――そもそもなぜ外資系企業に入社したのですか

 「確かに(出身の)神戸大学の経営学部からは商社や銀行、大手メーカーに就職する人が多くて、何で外資系企業に入るのか不思議がられました。ネスレ日本に入社した決め手は、手厚い人事制度でした。外資系だがスイスに本社があり、企業年金の支給がある。60歳で退職すると現役時代の基本給の半分が一生支給される。家族の関係もあり、地元に近い会社で働きたかったので入社しました」

 ――多国籍企業のネスレではどのようにキャリアを形成していくのですか。

 「米国型のグローバル企業とは違いますね。本社の人間だけが偉くなるわけではありません。ネスレでは世界各国どこの人間にもチャンスがあります。通常、最終的にスイスの本社役員になるエリートというのは、世界を転々としてキャリアを上げていくのです」

 「しかし、私は違う道を歩みました。初めてローカルスタッフで本社の役員級までいった人間です。これは日本法人のスタッフにはすごくいい刺激になったと思います。ネスレのグローバルエリートと違うコースを歩んでもここまでいけるのですから。今後も社員一人ひとりが最大限にパフォーマンスを発揮できるようにして、彼らのキャリアをサポートしていきたいと考えています」

■頭を使う仕事は10%だけ

 ――人事制度を見直し、働き方改革も進めています。

 「実はネスレ日本は年功序列や終身雇用など他の日本企業と同様な人事制度を導入していました。しかし、私がリーダーになり、今、改革しています。成果を重視した報酬や評価体系とするため、(一定の働き方に労働時間規制の適用を除外する)『ホワイトカラー・エグゼンプション』の導入を進めています」

 「以前、社員が何に時間を使っているかの調査をしたところ、頭で考える仕事は10%だけということが判明しました。プレゼンテーション資料作成ソフト『パワーポイント』を使った長ったらしい資料作成とか、ムダな作業を極力なくし、時間管理をやめて成果を出すことに専念してもらうようにしました」

 「上司と連絡をとれるようにすれば会社に来る必要もないわけです。私も部下にはミーティングでは3枚以上のプレゼン資料を見せないようにと言っています。わざわざグラフにしなくても口頭で説明すれば分かるのですから。こうした不要な作業を減らす環境をどうつくるかが大事です」

 ――どのようにして次世代のリーダーを育成していますか。

 「私はまず自分でやってみてどれだけ大きな成功になるかを見極めてからスイス本社に提案してきました。そうしてOKをもらったチョコレート菓子『キットカット』の期間限定商品は大ヒットしました。後継者の育成でもまずは自分で行動し、提案できる人を育てようと考えています」

 「2011年から『イノベーションアワード』という制度を導入しました。これは全社員2500人から、自ら考え、実践した新しい取り組みを募集して、成果を競うという『社員が声を上げる』仕組みです。面白いのは必ずしも人事評価の高い社員が受賞しないこと、あんな社員がというケースもあります」

 「当初は選考する役員の見る目が足りなかったのでイノベーションの芽をつぶしてしまったこともあります。しかし5年間、僕と擦り合わせをしてやっと選ぶ人が全役員で一致するようになりました。みんながアワードに向けて実行することと、評価する人の優れた判断力。この2点があれば、一匹オオカミのような社員にもチャンスを与えられるようになる。実際、賞をとった事業や商品などは間違いなく会社の売り上げに貢献しています」

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