ビジネスパーソン必読の「最新コンテンツ」

リーダーのマネジメント論

ネスレ日本 社長兼CEO 高岡浩三氏(上)

ネスレの革新的マーケティング仕掛け人

2017/07/07  (2/2ページ)

■オフィスのコーヒーを安くおいしくで問題解決

 ――具体的なイノベーションとは。

 「ネスレ日本はコーヒーマシンで家庭用のシェアを拡大してきましたが、家庭外の市場には手を付けていませんでした。コーヒーの消費で一番、杯数が多いのはオフィスで、顧客にとっては100円以上を払って自販機で買う缶コーヒーやコンビニエンスストアのコーヒーが当たり前。これが日本のビジネスパーソンの『常識』でした。だったら、オフィスで、おいしいコーヒーが20~30円で飲める仕組みを提供すればどうだろう。まさに問題解決でした」

 「では具体的にどのようなビジネスモデルをつくろうかとなります。今はインターネットの時代です。人を雇わずにネット通販で商品を仕入れてもらい、顧客にただでマシンの世話役となってもらう『アンバサダー』というサービスをやろうじゃないか、となったわけです。ネスレがマシンを無料で貸し出す代わりにコーヒーカートリッジの購入と飲用者からの代金回収を担ってもらう。これは私一人で考え、モデルをつくりあげました。北海道でテストしたら反響があったので、実際にスタートすることにしました」

 「日本市場は人口が減少するなか、競合他社との競争が激しい。しかし、スイス本社からしっかり稼ぐことを求められます。こうしたなかでは独自のイノベーションが不可欠となります」

■リーダーとして20数年連戦連勝

 ――リーダーの条件とは何でしょうか。

 「勝ち方を知っているのがリーダーの必要条件です。キットカットの担当をしていたとき、停滞していた売上高と純利益を伸ばそうとあの手この手を使いました。そんなとき、九州の方言にかけてキットカットが『きっと勝つ』というお守りになっていることを知り、受験生に訴求できるのでは考えました。それまで30億円も使っていたテレビCMを全てやめて、ホテルの従業員から受験生にキットカットを渡してもらう取り組みを始めました。売り上げが伸び、5年で利益率を2桁に高めました」

 「実は日本のネスカフェとキットカットが世界一の売り上げと利益率を誇ります。受験生キャンペーンは当初、上司から反対されましたが、そのイニシアチブがないと今日の成功はありません。だから発想し、行動することが大事です。とにかくリーダーというのは勝ち続けることが必要です」

 「リーダーシップのスタイルは時代に即したやり方がある。高度成長期には、労働組合の闘争を収められるような労務に強い人がリーダーに好まれました。しかし今は高齢化、人口減の時代だからイノベーションなしには生き残れません。時代に即した勝ち方を知っている人間でないとリーダーにはなれません」

 ――尊敬するリーダーはいますか

 「ビジネス界ではありませんが、シンクロナイズドスイミングの鬼コーチとして知られる井村雅代さんです。選手の分析やケアが非常に上手で、どこの国でコーチをやっても必ずメダルを取らせるというモットーがあるといいます。井村さんは鬼のように厳しいことで知られますが、『この人だったらメダルを取らせてくれる』と思うから、みんなついていくのです」

 「僕も仕事の7割は人事のことを考えています。ネスレ日本のなかで僕一人でできることは少ない。チームリーダーとして引っ張っていく必要がある。『君に迷惑をかけない』『トライしてみてくれ』と社員を説き伏せ続けているから、今があるのです」

 「勝ち続けることにこだわるとリーダーシップが生まれます。リーダーになって負けたなという記憶はないですね。20数年連戦連勝です」

高岡浩三氏(たかおか・こうぞう) 1960年大阪府生まれ。83年神戸大学経営学部卒、ネスレ日本入社。副社長などを経て2010年、生え抜きの日本人として初めて日本法人トップに就任。

(杉浦恵里 代慶達也)

ページ上部へ