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私を変えたMBA

サントリーHD社長 新浪剛史氏(下)

「情熱よりハーバード流で現場分析」

2016/09/13  (1/3ページ)

 サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長(57)が明かす、自身のMBA(経営学修士)体験。ハーバードビジネススクールでの過酷な日々を乗り切り、後半はいよいよ経営者への挑戦が始まる。MBAで学んだ経営知識や経営哲学、そしてリーダーシップ。それらが思う存分力を発揮する時が、ついにやってきた。

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■MBAを取って職場に復帰。社内ベンチャーの立ち上げや、ローソンへの経営参加などを通じ、経営者としての頭角を現し始めた。

 ハーバードビジネススクールは経営者になるためのゼネラルマネジメントを学ぶところなので、卒業したころには、自分も経営をやってみたいという気持ちが強くなっていました。

 まず社内ベンチャーをやろうと思い立ち、当時の自分の担当とはまったく関係ない、病院給食事業への参入を会社に提案しました。1年目は却下。めげずに、友人を介して米国で同様のサービスをしている企業のトップに会いに行き、日本でジョイントベンチャーをやろうと口説き落としました。すると、会社もそれならいいだろうと認めてくれ、お金も出してもらいました。

 事業に対する情熱は人一倍ありましたが、情熱だけでは先行する大手に勝てません。どうやったら勝てるか、現場を回り徹底的に分析しました。まさにハーバードで学んだ「マイケル・ポーターの競争戦略」の世界です。その結果、勝敗を分けるのはご飯とみそ汁の味だという結論に達し、そこに資源を集中。また、同じレシピでも機械の微妙な調子の狂いで味が変わるので、そこも改善。こちらはやはり、MBAのケーススタディーで学んだ生産工学の知識が生きました。こうして、大手を打ち負かすことができました。

 その後、三菱商事がローソンの経営参画を決め、そのプロジェクトの責任者に就いたのですが、その際には、ファイナンスの授業で学んだバリュエーション(企業の価値評価)などの知識が非常に生きました。企業買収といった時には、通常、投資銀行の人たちと一緒に仕事を進めるのですが、彼らの難しい話も手に取るように理解でき、それが好結果につながったと思います。

 持論ですが、今の企業経営では、ファイナンスのわからない人物をCEO(最高経営責任者)にすべきではありません。同様にCFO(最高財務責任者)も非常に重要です。CFOはその会社の戦略まで立てられるようにならないとだめで、ただの経理マンでは会社は成長しません。私もローソン時代、やはりMBA取得者でファイナンスに詳しい三菱商事の副社長に、ローソンのCFOに就任してもらいました。

 ただ、経営者にはそうした専門知識だけでなく、現場の社員と血の通ったコミュニケーションをする能力も求められます。むしろ、そちらのほうが実際の経営では大事だったりすることもあります。こうしたコミュニケーションの取り方というのは、ビジネススクールで学ぶというよりも、実際に経営の経験を積みながら徐々に学んでいきました。

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